自費出版といえば、大手出版社から地域の印刷業者まで、さまざまな業者が入り乱れる業種です。
しかも著者は、基本的に執筆業とは縁のなかった人々です。そのせいか、トラブルが絶えない印象があります。
しかし、本を出したいというニーズがある以上、業者としては、トラブルを回避して自費出版サービスを提供していくしかありません。
自費出版と商業出版
自費出版とは、著者が自費で出版費用を負担して書籍などを出版することです。
一方、商業出版とは、出版社が出版費用を持ち、売り上げの一部を印税として、著者に払う、出版形態のことです。
なお、出版費用とは、具体的に、原稿の編集、装丁、印刷、流通、宣伝などを指します。
自費出版のトラブルのあれこれ
「自費出版 トラブル」というキーワードの月間検索ボリューム数は90件です。
これらのキーワードに、ある出版社名を加えると、170件に跳ね上がります。
具体的にどんなトラブルがあるのかというと、
- 書店配本や陳列がされない
- 費用が高額になる
- 内容・品質が低いまま完成する
- 売れない、売れ残り在庫の問題
といったことです。
"トラブル"を業者側から見ると
ネット上で拾えるトラブル情報は、たいてい著者側に立って解説しています。なので、ここでは、業者側の視点でコメントしていきます。
書店配本や陳列がされない
これは結局、自費出版した本が売れないことに起因する問題と考えられます。
本が売れない原因は「書店配本や陳列がされない」ため、と著者側が思い込んでいるフシがあるからです。
書店で売れる本は、一部の人気作家の新作とか、話題性のあるトピックを扱い、それを効果的に宣伝した結果なのです。
無名の著者がどんな"自分の思い"を込めて書いても、それだけでは、なかなか一般読者には届かない。それが現実なのです。
その現実を伝えずに、流通・宣伝料金を取り、出版社が買い取ったわずかなスペースに「陳列」して、「書店配本」したことにしたのであれば、やはりこれは出版社側に問題があります。
著者側の過誤を誘っているからです。
費用が高額になる
これはトラブルというより、著者がサービス価格をどうみるか、という問題です。
オフセット印刷で100万円超えた、200万円かかったとしても、これ自体、業者が文句を言われる筋合いではありません。
わかりやすく価格を開示している限りは。
そして、どんな選択肢があるのか、何を選択すればいくらになるか、著者側が適宜、確認できるようにしておくことが円滑な取引への早道です。
内容・品質が低いまま完成する
内容は、残念ながら、著者の力量の問題です。
確かに、編集者を投入し、構成や見出しの付け方などに気を配り、適宜図版や画像をするのであれば、品質は改善されるかもしれません。
あるいは、プロに校正・校閲させたり、プロの写真家やプロのデザイナーを起用すれば、品質を高めることができるかもしれません。
自費出版業者がとるべきトラブル回避法
すべきことは二つ。
著者に誤解を与えない契約書を作ること。
NPO法人日本自費出版ネットワークが策定している自費出版契約ガイドライン に基づき、契約書を作ってはいかがでしょうか。
ついでに、この日本自費出版ネットワークの会員になり、お墨付きをもらって、「自費契約ガイドライン遵守事業者一覧」に載せてもらうといいかもしれません。
著者が必要なサービスを選択し、同時に費用を確認できる自動見積システムを導入すること。
出版・印刷サービスは作業工程が複雑で、価格表ではなかなかサービスとその料金を伝えきれません。
営業スタッフに無理な営業をさせないためにも、著者が自分で、見積価格を算出できる自動見積システムを導入するのは効果的です。
まとめ
トラブルの絶えない自費出版業界。とかく、著者側の無知に付け込む出版・印刷業者側が悪いという話になりがちです。
しかし、本を出したいというニーズがある以上、業者としては、自費出版にまつわるトラブルを回避していかなければなりません。
- そのためには、まず、著者側に「書店配本してもなかなか売れない」という現実を認識してもらうこと。
- 次に、お互いを守る公正な契約書を交わすこと。
- 最後に、自動見積システムで、著者が自分でサービスを選択し、価格に納得できるようにすること。